現状の社会制度がつくられた時代の背景とそれ以降の時代の変化
こんにちは!ローザスの小澤です。
 涼しいを通り越して、寒くなってきましたね。
 みなさん、ご自愛くださいね。
久しぶりに私の当番が回ってまいりました。
 シリーズとして書かせて頂いております「社会保障制度の今後」、
 前回は「Ⅰ.社会保障制度の基本的な考え方」と「Ⅱ.現状の制度について見ていきました。
今回は下記の点について見ていきたいと思います。
Ⅲ.現状の社会制度がつくられた時代の背景
 Ⅳ.それ以降の時代の変化
それでは、さっそくⅢの現状の社会制度がつくられた時代の背景にいきましょう。
厚生労働省のHPでは、戦後社会保障制度史というページにて、
 今日に至るまでの社会保障制度を簡潔にまとめています。
こちらによりますと、今日の日本の社会保障制度体系が整えられたのは昭和30・40年代です。
この時代に、国民皆保険・皆年金を実現しています。
 また、年金給付額の改善や老人医療費の無料化がなされ、
 社会保障制度は大幅に拡充されました。
看護学校の数も増え、看護師の数が増加し始めたのもこのころ。
この流れの中がいまも続き、看護師不足=看護師の求人がたくさんある状況を作りだしたわけです。
その後、いくつかの改正がありますが、
 制度上の大きな変化は2000年の介護保険制度の開始ということになります。
ですので、まず現在の社会保障費の2大支出先である、
 医療・年金の制度がつくられた昭和30・40年代の時代について考えてみましょう。
まずすぐに思いつくのが高度経済成長期にあたるということです。
 厚生労働省も今日盛んにアピールしていますが、
 社会保障はその財源を抜きには考えられません。
 高度経済成長に伴い税収が増加していた中で、現在の制度はつくられているということです。
次に年代別人口の構成です。
 生産年齢の人口(15歳~64歳)はこの時代、右肩上がりで増えています。
 伸びとしては高齢化率を上回る勢いで、
 人口ピラミッドはいわゆるつりがね型に近い形です。
 若い人が多ければ、当然病気にかかる方も少なく、
 医療保険も収入のほうが支出よりも少ないことになります。
また、家族のあり方も大きく異なっています。
 当時は三世帯が大きな割合を占めており、
 徐々に二世帯・核家族へと移行していくような段階でした。
 さらに医療、介護の必要な高齢者の多くは三世帯で暮らし、
 息子の嫁にケアをしてもらうという状況が続いていたわけです。
 ここでも負担は家族によってなされていた
 =社会全体で保証するコストは低かったわけです。
最後に雇用環境の変化があります。
 この時代はいわゆる「終身雇用」「年功序列賃金」「企業別組合」といった、
 日本型雇用慣行といわれる制度が企業で形成されていきました。
 基本は正社員であり、さらに右肩上がりで企業が成長しているため、
 保険額の負担はそこまで大きく感じられず、しっかりと払ってくれる、
 つまり社会保障費の担い手が厳然といたわけです。
まとめると、
 ①高度経済成長期=社会保障の財源は拡大
 ②生産年齢人口割合が高い=社会保障の支出は少な目
 ③高齢者は三世帯がメイン=社会保障の担い手はまだ家族
 ④正規雇用が中心=社会保障の財源が堅固
 の時代だったということになります。
いずれにしても、当てはまるのは、
 「社会保障費の財源が拡大し、堅固だった時代に
  現在の社会保障制度の大元はつくられている」
 ということです。
さて、続いてⅣ.それ以降の時代の変化についてです。
最初に分かりやすくまとめて言えば、上記の時代状況が大きく変化し、
 社会保障制度の前提が崩れてしまったということです。
①から④に沿って一つずつ見ていきましょう。
①の高度経済成長はご存知の通り、昭和40年代後半に終焉し、
 安定成長の時期に入ります。
 それ以降、バブル経済の崩壊を経て、低成長期へと移行。
 再度爆発的な成長は見込めない時代となってきています。
②の生産年齢人口割合ですが、同じく昭和40年代後半から横ばい、
 続いて平成に入ると減少傾向に入りました。
 少子化傾向も、いまだ歯止めがかかりません。
 逆に高齢化率は増加を続け、さらに割合が拡大していくことが見込まれています。
③の高齢者の三世帯ですが、その後は減少を続け、
 逆に単独世帯と夫婦のみの世帯という高齢者のみ世帯と、
 平成4年に入ると逆転します。
④の正規雇用に関しては、統計がはじまった昭和50年代から、
 ずっと割合としては減り続けています。
 つまり、派遣やパートなどの非正規雇用の割合がずっと増えているわけです。
つまり、数字に沿って変化をまとめると、
 ①経済成長の停滞=社会保障の財源は拡大しない
 ②少子高齢化=社会保障支出が増大
 ③高齢者単独世帯の増加=社会保障の担い手としての家族の崩壊
 ④非正規雇用の増加=社会保障の財源が不安定化
 ということになります。
改めて考えてみると、ここ40年に過ぎない間に、
 とても大きな変化を経験しているのですね。
さあ、いよいよ次回以降、こういった時代の変化に対して、
 政府はどのような手を打とうとしているのか、
 「社会保障制度改革推進法」に沿って見ていきたいと思います。
株式会社ローザス
2013年10月22日カテゴリー:医療全般
				
			
                    		



                        
