「看護プロ」にご相談いただいた時は、半年後に結婚を控え、これからの看護師人生をどう過ごしていくのか、ちょうど悩んでいらっしゃるタイミングでした。
野沢さんは、当時、大学病院勤務の6年目。
転職経験はなく、一貫して外科の分野で、病棟経験を積んできた方です。
この病院は2交代制でしたが、以前から少ない時でも月5回の夜勤、残業も毎日2時間程度は当たり前という、一般の病院に比べると、かなり厳しい就業環境で、お仕事をしていらっしゃいました。
更に、6年目ともなると、新人の面倒を見たり、看護研究を主担当として進めたりと、通常の自分の業務以外にも多くの仕事が与えられ、就業環境は厳しくなるばかり。
「こんなに仕事に没頭できるのも独身のうち」と割り切って仕事に打ち込んでいたそうですが、唐突に、付き合って3年になる彼氏からプロポーズされ、紆余曲折を経て、めでたく結婚をすることになったそうです。
ただ、新しい生活のスタートが近づくにつれ、仕事と家庭をどう両立させるべきかということについて、毎日悩む日々が続いていたようです。
元々野沢さんは、認定看護師を取得しようと考えていて、しばらくはバリバリ仕事をやっていこうと思っていたようですが、今回のことで彼氏とよく相談した結果、方針を180度転換、当面は家庭を優先した仕事の仕方をしようと決断されたそうです。
野沢さんはこれまでずっと実家暮らしの方でしたが、結婚すれば、当然家事に割かねばならない時間は増えますし、30歳ぐらいまでには子供が欲しいという気持ちも、次第に強くなってきたようで、日勤のみという働き方に大きな魅力を感じたとのことでした。
これからは家の都合で突然仕事を休まなくてはならないこともあるかもしれない、日勤のみの仕事で、そんな働き方ができるのは、クリニックでの仕事だとお考えになり、クリニックでの仕事を探したいとご相談をいただいたのでした。
ご本人からのこの申し出に対し、「看護プロ」では、野沢さんの指定のエリアで現在募集をしているクリニックがないかどうかまずお探しすることにしました。
クリニックの募集は、退職者の発生に伴う欠員補充など、一時的な募集が多く、病院のように常時求人が存在するわけではありません。
それを自分でイチイチ確認していくのは大変ですので、そこを「看護プロ」では専門のスタッフが代行して行います。
その結果、2件、野沢さんの希望しているエリアの求人がありました。
クリニックの募集は原則1名募集で、すぐ埋まってしまうということもあり、求人のお話をしたところ、野沢さんは、すぐにでも応募したいというお話をされました。
ただ、「看護プロ」では、本当に今クリニックで働くことが野沢さんにとってベストなのかということを、もう一度よく考えた方がいいのではないかという提案をさせていただきました。
というのも、クリニックで働くことは、一概に家庭を優先した働き方ができるとは限らないからです。
その理由は三つあります。
一つ目は看護師の数の問題です。
病院に比べ、クリニックは当然のことながら、看護師の数が圧倒的に少ないわけです。
確かに病院に比べれば仕事の総量は少ないかもしれませんが、人も少ないわけですから、自然、一人が占めるウエイトが重くなります。
病院と違い、クリニックでは常勤の看護師がそもそも二名しかいないということも珍しくありません。
二名しかいないところでは、当然一人が休むということになると、残された一人にかかる負荷は相当重いものになりますし、二人が交代で仕事をしている(常に出勤をしている看護師は一人という状態)のであれば、実質的に急な休みを取ることは不可能であると言えます。
次に挙げられるのが勤務時間の問題です。
一般の病院に比べ、クリニックの勤務時間は少し長いことが多いのです。
病院の日勤帯は17時か17時30分までとなっていることが多いですが、クリニックの場合、19時ぐらいまで診療をしていることが多いため、日勤と言っても病院に比べて一日の勤務時間が長くなりがちです。
当然、19時まで診療をしているということであれば、そのあと片づけなどもあるわけですから、帰りはもっと遅くなります。
野沢さんの場合、家に帰って夕食を作りたいというお話をされていたので、一般のクリニックでは、難しいのではないかと思ったのです。
そして最後は福利厚生の問題です。
やはり、全てに当てはまるわけではないですが、病院に比べると、クリニックの福利厚生は、見劣りしてしまうことが多いというのが実情です。
クリニックで看護師用の託児所を持っているところはほとんどありませんこれもある意味、そこで働く看護師の数が病院に比べてかなり少ないということに起因する問題かもしれませんが、その他の面でも福利厚生という点では、病院の方が有利な点が少なくないと言えるでしょう。
それでは野沢さんは一体どんなところで次のお仕事をするのが良いのでしょうか。
その一つの答えが、一般病院での日勤常勤という働き方です。
病院であれば、先程述べたような家庭との両立を困難とする要素は、クリニックに比べればだいぶ少ないと言えます。
当然、全ての病院が、そこで働く看護師の事情に配慮してくれるというわけではありませんが、そうした就業環境を実現することに真剣な病院というのも存在します。
「看護プロ」では、野沢さんの希望されていたクリニックの求人をまずお探しした上で、そうではない方向性も検討してみてはどうかと提案したのです。
この話をした数日後、ご本人としては、もしかすると病院の日勤常勤の方が今は良いのかもしれないと思われたようですが、一応やはりクリニックも見た上で判断をしたいということでしたので、クリニックと、看護師の就業環境改善に力を入れている病院、合計3か所の面談を調整させていただきました。
この3か所の面談をしてみて野沢さんが出した結論としては、やはり総合的に見て、病院で働いた方が良いという結論でした。
入職から数ヵ月が経っており、以前のお話からすると、そろそろ新婚旅行に行かれている頃でしょうか。
野沢さんのご活躍をお祈りしております。