大学病院に4年間勤務され、主にオペ室でお仕事をされてきました。
これまで転職をしたことはない方ですが、既に3ヵ月後の退職が決まっており、今月からは寮を出て、板橋に自分で部屋を借りて生活しているそうです。
最初に「看護プロ」にご登録いただいた時は、今回が初めての転職活動ということもあり、変に焦っていて、無理に性急な結論を出そうと必死になり過ぎているような印象でした。
ご本人の話としては、今の病院の就業環境はとにかく苛酷で体力的についていけない。
だから、新しい家からアクセスの良いところで、もう少しゆとりをもって仕事をしたい。
とにかく、ゆとりがあって家から近ければ何でもいいというようなお話でした。
もう少しお話をしていくと、介護老人保健施設や有料老人ホームなどといった、介護関連施設であれば自分の希望に合致すると思うので、それに絞って情報提供をして欲しいというのです。
確かに介護関連の施設は、急性期の病院に比べると、残業は少なく、業務もゆったりとしている施設が多いです。あくまで一般的な話ではありますが、老健は夜勤の回数が少ない施設も多いですし、有料老人ホームでは、看護師の夜勤自体がないことの方が普通ではあるでしょう。
ただ、花崎美香(仮名)さんが、このタイミングで介護関連施設に転職することは本当に良い選択と言えるのでしょうか。
この疑問を持ったのには、大きくふたつの理由があります。
ひとつは、花崎美香(仮名)さんの経験が、介護関連施設で働くにはまだ不足しているのではないかという点です。
たとえ就職できて働けたとしても、長く続きしないのではないかと思ったのです。
介護関連施設は、残業時間や夜勤の回数といった面では、比較的恵まれている施設が多いです。
特に花崎美香(仮名)さんが在籍していた大学病院と比べると、体力的にかかる負担は大幅に軽減されるでしょう。
ただ、介護関連施設には大学病院のように大勢看護師がいるわけではない上に、医師も常時待機しているわけではないため、看護師は医療従事者の代表として、時には、医師や他の先輩看護師に代わって医療的な判断をすることが求められるのです。
老健では医師の当直がなく、夜勤の看護師は1名ということも珍しくありません。
特に花崎美香(仮名)さんは、全くないわけではないものの、これまではオペ室での経験が長く、入居者の健康管理を総合的に行うといったことを突然一人でやれと言われても厳しいのではないかと思ったのです。
次にふたつ目の理由ですが、それは待遇、すなわち給与の問題です。
そもそも、大学病院は一般の病院に比べて給与が高いと言えます。
それは、夜勤や残業が多く、基本給に手当がだいぶ上乗せされているということが大きいですが、一般病院に比べ、大学病院では賞与の額が多く、花崎美香(仮名)さんに限らず、大学病院から転職する際に、給与が問題になることは珍しくありません。
更に言うと、介護関連施設は夜勤の回数が少ないこともあり、一般の病院と比べても多少給与面で見劣りしてしまうことが多いのです。
ですから、花崎美香(仮名)さんの希望通りの転職をするということは、乱暴な表現をすれば、看護師として一番給与水準の高いところから、一般の病院から見ても少し見劣りする施設への転職をするということであり、給与がかなり下がってしまうということは覚悟してもらう必要があるのです。
花崎美香(仮名)さんは大学病院の給与水準が高いということは認識されていたようですが、介護関連施設が一般の病院よりも給与水準が低いことは認識されていなかったようでした。
「看護プロ」では、ご本人のお考えに対し、以上2点の懸念をお伝えし、将来的に介護関連施設でお仕事をするためにも、まずは少し就業環境の落ち着いた病院で病棟の経験を積むことが良いのではないかとご提案をしました。
結果、少し迷われた面もあったようですが、最終的には150床前後の就業環境の落ち着いた病院でお仕事をすることになりました。
その病院は大学病院からの転院の多い病院で、比較的容態の落ち着いた患者が多い病院ということもあり、比較的ゆったりとした就業環境がウリの病院でした。
グループ内に老健も持っている病院でしたので、病棟経験を積んだ上でそちらで働きたいということであれば、将来的に十分可能性はあるとの環境です。
花崎美香(仮名)さんのご活躍、お祈りしております。